高校の授業の話とかを聞いているうちに、そういえば、と思って「最近、高校とか大学の授業を今更もう一度受けたいと思うことがある」という話をした。大学の時あの授業を取っておけばよかった、って後悔してるものがある、と。もう一度勉強したくても、社会人をしながら私が求めてる水準の学びを得る方法がなかなか見つからない、と。何をやりたいの？って聞かれて、今はシェイクスピアをやりたい、大学で授業を、あったのに取らなかったことを、すごく後悔してる、って言ったら、笑ったりしないで「シェイクスピア！いいね！」と言ってくれるこの先生がやっぱり大好きだと思った。

「まだ若いんだし、事務なんて経験さえあれば中途採用いくらでもあるから、ある程度資金と先の見通しがあるならまた学び直したっていいと思うよ」って言われて目から鱗が落ちた。仕事辞めたいって言ってたけど、その先に「学び直す」っていう選択肢を全く考えてなかったから。
あと先生には言い忘れたけどヨーロッパの服飾史と、大体中世くらいのヨーロッパの歴史も体系的に勉強したい。時間がいくらあっても足りない、人生短すぎ。

学ぶ内容が社会の役に立つかどうかなんて考える必要ない、やりたいことをやったらいい、と背中を押してくれた先生がいたから、（そしてそれを認めてくれる親がいて、まさに一番やりたかったことを教えてる先生のいる大学に入学したから、）今の私があるんだと思う。ギリシャ神話勉強して何の役に立つんだよと言われるとマジで何の役にも立たない。社会的には。私が楽しいだけ。でも、それでいいんだと、私が高校生の時も、今も、変わらず笑って言ってくれることが嬉しかった。

先生がこれから世界史の授業を通して教えたいことも語ってくれた。歴史を教えることで、遠い国の人、遠い昔の時代の人、そういう遠く離れた人に対するエンパシーを感じることができたら、戦争は起こらない。それを、学年のうち30人くらいが分かってくれたら、10年で300人。周りの人も巻き込めば3千人、3万人……そうやって、世界はいつか平和になる。私が高校生だったころ、先生がまだ、今の私とそう変わらない歳だったころと同じ、楽しそうな顔で語ってくれる先生がとても眩しかった。

どうやって教えようかって悩んでる時が一番楽しい、と言って笑う先生を見て、本当にこの人は教員に向いてる人なんだなと思った。私とは全然違う、なのに不思議と気が合う、大好きな先生だなと思った。

私が大好きだった先生の、一番大好きだった部分が、少しも失われていなくて、卒業して10年以上、最後に会ってからも7年以上経って、今もあの頃と同じように笑って話せたことが何よりも嬉しくて、本当に幸せだった。

家に帰って、ご飯を食べながら、今日母校に寄ってきちゃったんだ、〇〇先生と会って話せたんだ、って言ったら、親にちょっとビックリされた。最近本当に元気が無くて、最低限の用事以外で外に出られなかったし、ひどいときは趣味の宝塚でさえ一人では出ていけなくて劇場のそばまでついてきてもらったりしてたから。随分元気になったね、って喜んでくれた。

それから、シェイクスピアを学べる場所が本当にない。せめて勉強の仕方が知りたい。2時間くらい、勿論お金払うから、勉強の仕方と当時の英語の読み方だけでも教えてくれる人とかいないのかな、って話してたら、母校（大学）の指導教員にまずは会ってきたら？って言われた。母校の〇〇先生のシェイクスピアの授業を、英語開講の授業だからっていうだけの理由で受けなかったことをずっと後悔してる、って言ったら、指導教員に普通に会いに行くついでに世間話的にそういう話をしたら、もしかしたら話を通してくれて、ちょっと時間作ってくれるかもよ？って。もう一回目から鱗が落ちた。その先生ともし話せるなら、たった30分でも私が知りたいことは教えてくれると思う。シェイクスピアの英語の読み方、おすすめの和訳と信頼のできる参考文献や論文、先生が参照するレベルの注釈書。私が読めるのは日本語と英語だけだから、その範囲内で。まずはそれが知りたい。それがわかればある程度自分で勉強ができる。その方法は大学で嫌になるほど教えてもらった。

それが叶うかどうかはともかくとして、そろそろ大学の恩師にも会いたいなとはずっと思ってるから、本当に4月に異動になって仕事が落ち着いたら、一度連絡をしてみようかなと思う。

父親に至っては「院に行くって言いだしたとき、ドクターまで行ったっていいと思って資金は用意してたから、今から行きたいなら行ってもいいよ」とか言い出す始末。論文はもう書きたくないから丁重にお断りしたけど。
いい先生と、いい家族に恵まれたなと思う。上司にはあんまり恵まれないけど。